世界選手権で思ったこと | アンテナ

世界選手権で思ったこと

02/04 00:53

今更だが、世界選手権について思ったことを書きたいと思う。
 
今回は、なぜか2か国もワイルドカードで急きょ出場することになっただけでなく、そのアイスランドとドイツは、開催国カタールの属するAグループとは準々決勝まで縁のないCとDグループに配置され、なおかつ、そのCDに去年のヨーロッパ選手権で決勝進出した欧州トップ2チームのフランスとデンマークが入り、いかにも、カタール側とデンマーク側で力の不均等がみられ、嫌なトーナメントになりそうだな、と予感していた。
その予感どおり、デンマーク初戦、楽勝相手と見込んでいた対アルゼンチン戦で、これでもかこれでもかという2分退場の嵐で、ディフェンスに勢いを失ってしまったデンマークは思わぬ苦戦を強いられ、引き分けという結果で終わってしまい、結果として1位通過を困難にさせ、2位通過でトーナメント戦の初戦が対アイスランド、準々決勝でいきなり対スペイン戦と厳しいトーナメントとなった。
いくらルール改正したとはいえ、ここ6年ヘビーにハンドボール観戦する身としては、こんなんで退場になるの?これじゃディフェンスなんてできないじゃん、と思うほど、ハンドボールをつまらなくする厳しいジャッジだった。
これは、カタールを決勝に進めさせるための陰謀だと信じていた。
 
しかし。
決勝戦を観て考えが変わった。
 
フランスは間違いなく世界一レベルであるが、カタールも思ったよりも悪くなかった。というか、たとえホーム開催という利があり多少のバイアスがあったにしても、全然フランスと対等に戦えていたと思う。
少なくとも、去年のデンマーク開催での決勝戦と比較してそう思った。
ホームで、たぶん90%以上がデンマーク人観客という絶好の雰囲気だったにもかかわらず、最初からウンともスンともいわない情けなさに比べると雲泥の差であった。
まぁ、人工的に作られたチームが勝つなんてシャクだからフランスを応援していたけれど。
 
彼らがもっていて、デンマークに足りないもの、それは、チームワークである。
なんだかんだ、決勝戦を観るのは面白かった。フランスもカタールもチームがまとまっていて流れがスムーズであり、動きがダイナミックだった。
それに対して、デンマークは個々のレベルはすぐれているのに、チームとしてはちぐはぐでみるのがつらい。ディフェンスはすぐに穴ができ、相手に恰好の攻めの機会を与え、キーパーもディフェンスの助けに乏しいだけに止められず、、で、攻めは攻めで、パスワークがつたなく、スクリーニングもかけられないという協力体制の乏しさで誰も打てない、、で。
例外はスペイン戦のNoeddesboによる棒立ちスクリーニング。Mikkel Hansen がシュートするときに、Noeddesbo がJoan Canellasのディフェンスを止め、Mikkel Hansenはスペースを得て打ちやすくなるというチームプレーは素晴らしかった。本当だったら、Toft兄弟もそういう役割でバック選手が打ちやすくなるようもっと助けるべきだった。
 
ホーム開催だった去年でさえデンマークのチームプレーはイマイチだった。やはりここ数年でもっともよかったのは、2011年のスウェーデン開催の世界選手権である。
あのときは、ほとんどホーム開催の感覚で参加できたからと思っていたが、ほとんど代表選手がフランスリーグで活躍しているフランスチームと、この大会のためだけにカタールに住み代表チームでずっとインテンシブに練習してきたカタールチームをみて、デンマークも2011年のときはMikkel Hansenを含め大半がデンマークリーグとドイツのデンマーククラブ・フレンスブルグでプレーし、互いのことをよく知っていたおかげなのかな、と思った。
今はMikkel Hansenはひとりフランスリーグにいるし、Niklas LandinもToft兄弟もドイツのローエン、キール、ハンブルグにいるし、多くが国外のクラブに移ってしまい、普段バラバラなせいか、息が合わないような気がする。アナウンサーもよく、「あ、misforstaalse(勘違い、誤解)ですね。」とか言ってたし。
そう、ディフェンスでは、このmisforstaalseが命取りになる。ましてや、最近はアグレッシブが流行っているので、おまえが前に出たら俺は後ろで守るの、あ・うんの呼吸が常になおかつハイスピードで働いていないと、ディフェンスとして機能しないのである。だから今はディフェンダーは重厚だけでなく、速さも必要なのである。
フランスもカタールもそういう速さが十分あったと思う。これは個々が速くなければならないが、同時にお互いを理解していないとなかなかチームとしてのディフェンスの構築は難しいと思う。
 
そういう意味では、カタールはチーム作りとして成功したと思う。
最初は決勝進出シナリオによる試合操作だと思っていたけれど、どうもそれだけでなく、チームそのものの強化にもものすごくエネルギーをかけて取り組んできたことがわかった。バルセロナのキーパー・サリッチなどかなり高齢だと思うのになかなかやるな、と思ったけれど、ディフェンスとのコンビネーションのおかげが大きいであろう。
ただ、11人も他国から選手を買ってカタールに住まわせ代表チームの練習に専念させ、スペイン人の監督を雇い、観客もスペインから買うなど、なぜハンドボールごときにそこまでやるかはわからないが。サッカーならまだしも。あ、というか、次々回のカタール開催のワールドカップでは同じことをやるのかもしれない。
準々決勝にも進めなかったスウェーデンは、国際ハンドボール協会に、過去にある国の代表選手になったことのあるひとは、別の国の代表チームに参加してはならないというルールを設けるべきだとクレームをつけるらしく、デンマークもそれを支持するとしているらしい。
 
実際どうなるかはわからないが、こういうことがトーナメントをつまらなくするのは事実である。
なぜなら、こういう国際大会の醍醐味は、どれだけ完成度が高いかを競うというよりかは、国による違いを楽しむことにあると思う。
去年は、鉄板でクロアチア、スペイン、デンマーク、フランスというトップレベルでなおかつそれぞれ特徴をもった4か国が準決勝に進み、その比較が面白かった。
しかし今回は不均等なグループ分け、ところどころみられるバイアス、国というよりチームとして人工的につくられた開催国チーム。あまり楽しめない大会だった。
しかしさ来年は名実ともに世界一のフランスで開催される。次回の世界選手権は面白くなることを期待したい。


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